事業報告
事業番号18-016
野生ボルネオ・オランウータンのオスの社会行動に関する研究
報告者:金森 朝子
期間:2007年3月5日 〜
2007年3月31日
オランウータンは単独性の強い霊長類であるため、その社会行動を観察することは非常に難しい。調査地における個体識別及び血縁関係、各個体の遊動域や行動、食物、他の個体との遭遇率などを明かにするには、長期間のモニタリングから得られる基礎データの蓄積が重要である。ダナムバレー森林保護地域で野生オランウータンの調査を2004年より開始して3年が経過した。今年度は、2006年7月-9月には共同研究者の久世濃子氏、9月-12月と3月に筆者がマレーシアに渡航し、野外調査と調査地整備を行った。
2007年3月の渡航は短期であったために、主にアシスタントとの打ち合わせや支払いなどの調査地の管理の仕事が主になり、その合間に調査に出るという状況であった。3月に筆者が行った調査では、定住個体を2頭目視、3頭追跡、計5頭を確認した。全観察時間は57時間(5日間)であった。オランウータンの遭遇率は、2005年3月では21.8%、2007年3月には31.4%であった。他の時期では遭遇率は常に50%を超えるのに対し降水量の多い3月では遭遇率が減少するようである。今回の特記すべき点としては、Flanged
MaleのLong Call音声の録音に成功した。Long Callとは、Flanged
Maleだけが使うコミュニケーションの手段であり、繁殖行動のためにメスを誘ったり、他のオスに対して警告を発したりする意味がある(MItani,1985)。今回は、Clipperという名のFlanged
Maleが昼頃にネスト(巣)で休息中に、頭上から枝がネストに落ちてきたときに驚いて発したLong
call音声を記録することができた。

Flanged Male
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