事業報告

事業番号18-010

プリオピテクスとアフリカ化石類人猿の運動復元

報告者:中務 真人

期間:2006年11月19日 〜 2006年12月9日

 現生類人猿の骨格に認められる懸垂運動適応の起源を明らかにすることは、その進化研究において重要な課題の一つである。プリオピテクスは中新世ヨーロッパの原始的狭鼻猿類で、著しい懸垂運動や垂直木登りの適応は欠くとされているが、同時代のアフリカ類人猿に比べると現生類人猿的な特徴が骨格にモザイク的にみとめられる。モロトピテクスは前期中新世ウガンダから知られている大型類人猿で、一部の研究者によって現代型懸垂運動をおこなっていたと主張されている。これらをケニア国内で発見されている化石類人猿と比較するために、各所蔵機関で、資料検索を行った。

 チューリッヒ大学人類学研究所において、前期?中期中新世狭鼻猿類プリオピテクス・ヴィンドボネンシスと懸垂運動に適応している現生真猿類(類人猿、クモザル亜科)の骨格標本を観察・計測した。ウガンダ博物館では前期中新世の大型類人猿であるモロトピテクスの腰椎と四肢骨を観察・計測した。ケニア国立博物館では、前期?中期中新世の類人猿複数種(プロコンスル、アフロピテクス、ナチョラピテクスなど)の体幹・四肢骨資料を観察・計測した。プリオピテクス、あるいはクモザル亜科と現生類人猿に共通して認められる派生形質は明らかに平行進化の結果である。この結果と比較しながら、モロトピテクスと現生類人猿に共通する特徴が、起源を一つにするのか、あるいは平行進化の結果なのかを検討した。モロトピテクスの腰椎についてこれまで議論されていない興味深い知見が明らかになった。


チューリッヒ中央駅

 


ウガンダ博物館

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