事業報告

事業番号18-005

ベトナムにおける樹上性小型哺乳類の分布調査および国際ワークショップに参加

報告者:押田 龍夫

期間:2006年12月21日 〜 2007年1月1日

 現在ベトナムでは、テナガザルをはじめとする種々の霊長類の保全が計画されている。樹上性の霊長類が生息する森林環境の保全は重要な課題であり、このための基礎資料作成には樹上性哺乳類全般にわたる分布調査が必須であると考えられる。そこで、霊長類の生息環境保全に関する基礎資料作成を睨んで、彼らと同様に樹上に生息するリス類およびモモンガ類の分布調査を行った。また、これまでに蓄積された野生哺乳類に関する日本とベトナムとの共同研究の成果についてワークショップが開催された。この機会を利用して、私はベトナムも含め台湾、中国、インドシナ半島に分布するクリハラリスCallosciurus erythraeusの系統地理学的研究に関する紹介を行った。

ベトナム北部カオバンに位置する Trung Khanh国立公園において、樹上性小型哺乳類(リス、モモンガ)の捕獲調査を行った。その結果、クリハラリス、ケアシモモモンガ、ホオジロシマリス、カオナガリスの分布を確認することができた。また、ベトナム中部のニンビンに位置するCuc Phuong国立公園において、亜熱帯林に架設した巣箱が小型哺乳類の調査に有用であるか否かの継続調査を行った。本調査のため、昨年4月から巣箱を架設しているが、これまでは小型哺乳類による使用はほとんど見られていなかった。しかしながら、今回、クサビオモモンガ一個体が巣箱を利用していた。また、10個の巣箱では、ラットの糞、齧痕、体毛などが認められ、樹上性小型哺乳類が多く使用していることが明らかになった。 Workshop on International Cooperative Wildlife Research Projects in Vietnamに参加し、ベトナムの野生哺乳類に関する様々な研究事例を知ることができた。私自身も、山脈および大河などの地理的障壁がクリハラリスの系統地理的パターンにどの様な影響を与えたかに関する研究事例を紹介し、有意義なコメントを頂くことができた。


採集されたリス個体を運ぶ派遣研究者(中央)


標本作製作業中の派遣研究者(右から2人目正面)

 

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