事業報告

事業番号18-062

HOPEワークショップ「人間の進化の霊長類的起源」での講演発表のため

招へい依頼者:平井啓久

期間:2006年11月2日〜2006年11月12日

Anthony Tosi 氏は旧世界ザルの分子進化研究の第1人者であること、氏が最近示したアジアのマカク類やアフリカのオナガザル類の新しい進化様式の詳細を聴き旧世界ザルの進化について議論を深める必要があったこと、が主な招聘理由である。

 Tosi氏は「オナガザ亜科サル類の比較系統学から得た進化的知見」というタイトルで講演を行った。講演内容は母系遺伝するミトコンドリアDNA、父系遺伝するY染色体遺伝子、ならびに両系遺伝する常染色体遺伝子を比較解析することによって、オナガザル類の最近(種分化後)の進化様式が明確になったというものだった。具体的には、アジアのマカク類はミトコンドリアDNAを通してきると種分化に沿った分岐系統樹になるが、Y染色体遺伝子から解析すると同じ種でも地域間の遺伝子移入がみられた。こういった遺伝子による不一致は地域間の遺伝子交流の指標になり、単一の遺伝子による分子系統解析では、正確な系統分岐評価が下せないことを示した。

これ類似した現象はアフリカのオナガザル類の種間関係にも見られ、種分化の態様が必ずしも二分岐によるものだけではなく、網目状の遺伝子流動もあり得ることを示唆した。これらの発表を基に様々な意見交換が行われた。


発表中のAnthony Tosi

 


ワークショップに参加・発表したメンバー(一部)

 

 

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