事業報告

事業番号17-022

国際シンポジウム「イルカ類と霊長類の社会生態」と
第9回国際哺乳類学会でのシンポジウムに2人の研究者を招へい

招へい者:
Louise Barrett (University of Liverpool, UK)
Richard Connor (UMASS-Dartmouth, USA)

報告者:山極 寿一

期間:2005年7月29日 〜 2005年8月1日

 2005年7月29日と30日に京大会館(京都市)にて、HOPEと京都大学21世紀COEプログラム「生物多様性研究の統合のための拠点形成」と合同で国際シンポジウム「イルカ類と霊長類の社会生態」を開催した。その目的は、現生の哺乳類の中で最も高度な知性をもつイルカ類と霊長類が海と陸という対照的な場所でなぜ似たような知性を発達させたのかを、社会生態の知見から検討することであった。両分野の最先端の研究者20名が口頭で研究発表を行い、若い研究者や学生による31のポスター発表があった。

この中で特別にHOPEのセッションを設け、Louise Barrett氏とRichard Connor氏に講演をしてもらった。Barrett氏は霊長類の知性について、その進化史と要因をMachiavellian的知性仮説を中心に解説して自説を述べた。Connor氏はイルカ類のオスに見られる集団間の連合行動について、それを可能にする社会的知性をもとに論じた。

また、移動日を挟んで8月1日に札幌コンベンションセンター(札幌市)で開かれた第9回国際哺乳類学会では、「イルカ類と霊長類の社会生態の比較」というシンポジウムを催し、ここで両氏にはコメンテータとして参加してもらった。イルカ類と霊長類の研究者が二人ずつ組み共通のテーマで論じた後、両者はそれぞれ哺乳類の認知能力の収斂現象と音声や採食行動に見られる文化的な多様性について意見を述べた。

本シンポジウムはこれまで交流のほとんどなかったイルカ類と霊長類の研究者が討論するという、世界でも初の試みであったため、うまく議論のかみ合わないところもあったが、新しい研究課題や方法論が検討されるなど実りのある成果も多かったように思う。これらの成果はChicago University Pressから本として出版するべく現在準備を進めている。今後、再びこのような機会をもちたいと思う。


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