事業報告

事業番号17-018

野生オランウータンの行動生態研究の予備調査

報告者:久世 濃子 東京工業大学生命理工学研究科 博士課程5年

期間:2005年8月8日 〜 2005年10月28日

訪問先:マレーシア領ボルネオ島ダナムバレー森林保護地域

野生オランウータンの社会交渉を明らかにするためには、まず調査地における個体識別及び各個体の食物、移動、行動等に関する基礎的なデータを収集することが必要である。ダナムバレー森林保護地域では共同研究者である金森朝子氏が2004年7月から野生オランウータンの調査を行っている。今回は金森氏と共同で現地調査を行い、基礎的なデータの収集と調査環境の整備を行うために渡航した。

調査期間中のオランウータンとの遭遇率は80%以上に達し、22頭という非常に多数のオランウータンを観察することができた。また1本の木で最高8頭が同時に採食していた例や、子持ちメス1頭とフランジのないオトナオス2頭が関与した交尾と追い払い、など社会交渉を数多く観察することができた。金森氏が行ってきた定期的なネストセンサスとフルーツセンサスも継続して行った。さらに調査地内の古いトレイルの整備等も行い、オランウータンをより長期間、広範囲にわたって安定して追跡できる態勢を整えた。本研究では樹上でも観察を行うことを計画しているが、近隣のResearch Centerから木登りができるアシスタントと装備を借用できることになり、来年から本格的な樹上観察を行う態勢も整えることができた。今までの観察結果から当調査地の生息密度はボルネオ島内の他の調査地に比べて2倍以上の値を示すことが明らかになり、社会交渉を研究するうえでも非常に有望な調査地であることが確かめられた。


遊ぶコドモ達(左からコドモのメス、ワカメス、赤ん坊のオス)※同腹姉弟ではない


フランジのないオス(名前Aki)

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