事業報告

事業番号17-016 共同研究

「ヒトの平坦な顔面形状の進化のメカニズムや適応要因の考察」にかかる研究打ち合わせ

報告者:西村 剛, 京都大学大学院理学研究科動物学教室自然人類学研究室・日本学術振興会特別研究員(PD)

期間:2005年10月17日 〜 2005年10月26日

訪問先:ドイツ マックスプランク進化人類学研究所

 本共同研究事業は、ヒトならびにチンパンジーの乳幼児標本をCT撮像し、両種の顔面頭蓋の内部構造形態の成長過程を比較分析しようとするものである。それらの結果から、ヒトとチンパンジーにみられる顔面形状の差異を生み出す内部骨構造の変化を明らかにし、その個々の形態学的変化にともなう機能的適応を考察し、ヒト系統における顔面形状平坦化の進化の道筋や適応を探ろうとしている。

所期の目的を達成するには、ヒトとチンパンジーの乳幼児から成体にいたるまでの十分な頭蓋骨標本と、それらをCT撮像できる機関との協力が欠かせない。マックスプランク進化人類学研究所のHublin教授を中心とする研究グループとの協力によりそれらの研究を推進するため、研究の詳細な打ち合わせと、頭蓋骨標本の予備的調査を行う必要があった。

 

 本共同研究の対応者であるマックスプランク進化人類学研究所のHublin教授と、今後の共同研究の進め方について意見交換した。最近、同研究所には高性能CTが2台導入され、化石人類等の歯牙内部構造の分析が進みつつあることが紹介された。

打ち合わせの結果、まず、ストラスブール医科大に所蔵されている暦年齢のはっきりしたヒトの乳幼児頭蓋標本を中心にCT撮像することになった。このデータは、我々の共同研究以外の研究にもひじょうに有用である。

滞在中、来研中の研究者らと、CT研究の動向や技術的問題に関する意見交換も行った。ヒト標本を所蔵するフランス・ストラスブール医科大学とチンパンジー標本を所蔵するベルギー・王立中央アフリカ博物館を訪問し、標本の所蔵状態やその利用状況等の説明を受けた。これらの研究打ち合わせ、ならびに視察により、来年度以降の共同研究の円滑な実施が図られた。


ストラスブール医科大学


王立中央アフリカ博物館

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