事業報告

事業番号17-011

大腿骨頭の骨梁構築と霊長類の運動様式の関連に関する研究

報告者:中務 真人

期間:2005年11月10日 〜 2005年11月26日

訪問先:チューリッヒ大学 人類学研究所・博物館

プリオピテクスは前期中新世の末から後期中新世の間ヨーロッパに棲息した原始的な狭鼻猿類である。このグループはユーラシアで特異な適応放散を遂げ、現生類人猿的な懸垂運動に特殊化した種類も存在する。この点で、現生類人猿骨格の機能形態的解釈に重要な資料である。チューリッヒ大学の人類学研究所にはプリオピテクス・ヴィンドボネンシスのオリジナル標本がある。また、同研究所には通称「シュルツコレクション」とよばれる膨大な霊長類骨格資料が保管されている。また、チューリッヒ大学の人類学研究所はヨーロッパにおける霊長類学の一大拠点であり、こうした研究所における対応者と良好な関係を構築し、標本利用や共同研究の可能性を探ることは、今後の研究の発展に重要である。

チューリッヒ大学の人類学研究所に保管されている、プリオピテクス・ヴィンドボネンシスのオリジナル標本(1号、3号他断片化石)の観察と計測を行い、現生、化石アフリカ類人猿との比較を行った。プリオピテクス・ヴィンドボネンシスは前期中新世の末にヨーロッパに棲息した原始的な狭鼻猿類であるが、懸垂運動に特殊化し、現生類人猿に収斂した骨格特徴を示す。指骨の弯曲、腰椎椎体の短縮、胸骨の拡張、鎖骨の伸長などである。しかしながら、全ての点で現生類人猿的というわけではなく、原始的な特徴を多く各部に保ちながらモザイク的に類似しており、化石類人猿のホモプラシー研究と運動復元には重要な比較資料である。また、クモザルとホエザルの骨梁をマイクロCTで撮影した。プリオピテクスについては、撮影を依頼して今後データを入手する予定である。


チューリッヒ大学人類学博物館


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