事業報告
事業番号17-005
タイ南部Satun州の森林地帯に住む狩猟採集民マニ族により狩猟された霊長類の同定・計測と、マニ族の生業に関する動物考古学的研究
報告者:本郷 一美
期間:2005年6月15日 〜
2005年7月15日
ドイツ
ドイツ・チュービンゲン大学先史学部による民族考古学的調査で、タイ南西部のマニ族のキャンプサイトであるサカイ洞窟から多量の霊長類を含む動物骨が採集された。これらの資料はチュービンゲン大学に保管されており、ドイツ国外へ持ち出すことが禁じられているため、資料の同定・計測をおこなうためにチュービンゲンに滞在する必要があった。
チュービンゲン大学先史学部動物考古学研究室にて、1997年の民族考古学的調査によりタイ南部のサカイ洞窟から出土した動物骨の整理、同定、計測、写真撮影をおこなった。2004年11-12月の1ヶ月間、HOPE事業の助成により、この動物骨資料の分析を進め、テナガザル、ラングールなどの霊長類が資料の約70%を占めることがわかった。今年度は、この分析を継続し、出土資料の大部分の分析を終えた。出土遺物は50-100年前のものと推定されており、遺跡から採集された動物骨の中にはテナガザルをはじめとする霊長類骨が多数含まれている。近年、森林破壊、タイ政府の定住政策などによりマニの伝統的な生活様式を維持することが困難になってきており、霊長類の狩猟もほとんど行われていない。分析した出土動物骨はマニの生活が変容する以前の食料残滓であり、狩猟対象となる動物種構成、それぞれの種の食料としての重要性など、伝統的生業の詳細を明らかにすることができた。 Uerpmann教授と成果発表に関し協議した。成果の一部は2006年8月にメキシコで開かれる国際考古動物学会大会で口頭発表する予定である。

解体痕がのこる霊長類の大腿骨
HOPE Project< >
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