事業報告

事業番号17-003(共同研究)

マクロ解剖学領域における標本水浸解剖技術とCT画像解析技術の取得

報告者:川島 友和 東京女子医科大学 医学部解剖学教室 ・ 助手

期間:2005年4月26日 〜 5月24日

近年、大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)などを通して得た貴重な材料を比較解剖学的解析を行ってきた。

その際に、最終的に骨格標本作製の必要のある個体の場合では、ホルマリン固定を出来ない場合がしばしばあった。したがって、未固定新鮮材料のまま解析することができれば、今後霊長類の比較解剖学的データ収集する機会が増え、より有意義な結論が得られることが期待される。

派遣先のInstitute for Zoo and Wildlife Research (IZW)のDr. Freyは、同様の理由から、以前から未固定新鮮材料を水浸して解剖する方法を採用している。そのことから、同手法を収得するために渡航を必要とした。


以前より、心臓に分布する自律神経系の比較解剖学的解析を行ってきた。その中で、特に大型類人猿では、最終的に骨格標本を作成することが多く、ホルマリン固定を施すことが出来ない場合があった。

今回の目的は、未固定新鮮材料を対象とした水浸解剖技術取得である。そこで、必要な設備を備えたBerlinにある Institute for Zoo and Wildlife Research (IZW)においてマクロ解剖を行った。

まず初めに、その領域は、渡航先研究所のDr. Freyの専門であるSaigaのvocal tractとした。Deep frezeer内に保存されていた材料を2-3日解凍後、非破壊的解析としてCT scanを使って、骨や軟骨の形状、位置情報を精査した。

特に、解剖学的記載の乏しい種においては、解剖前の貴重な情報源になるばかりでなく、機能解剖学的解析にも利用することができる。今回の解析では、光速の高性能ヘリカルCTを使用して、断層厚は、1.2mmで解析し、work stationで3D-reconstructionをした。

その次に、CT-dateを参考として浅層から順に、主にハサミとピンセットを用いて、冷水内で解剖を行った。解剖以外(例えば、夜等)は約0℃で冷蔵保存した。その記録は、適宜解剖の段階を水中に浸した状態で、写真撮影により行った。

その結果、副鼻腔の広がりやvocal tractの長さなどの数項目において、画像解析と実際のマクロ解剖解析の間に違いが確認された。しかし、同種の解剖学的データは非常に少ないので、解剖前の骨、軟骨のデータとしては有用であった

。また、未固定材料における同手法は、末梢神経系の解剖にはあまり適していないと思われる。 今後、未固定状態で解析する必要がある場合には、同手法に改良を加えながら、霊長類の末梢自律神経系の解析に利用していく予定である。

 


Institute for Zoo and Wildlife Research (IZW)

 


骨標本室

 


CT-scanner

 

 

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