事業報告

事業番号17-002(共同研究)

大型類人猿における身体模倣にかんする研究の打ち合わせおよび国際シンポジウム講演

報告者:明和 政子 滋賀県立大学人間文化学部・講師

期間:2005年4月26日 〜 5月18日

派遣先での研究を必要とした理由:最近の比較認知科学の成果として、身体模倣は、ヒトの系統がチンパンジーの系統と分岐した後、飛躍的に獲得した能力である可能性が示されている。

この成果は、「ヒトらしさ」を探る様々な分野の研究者にインパクトを与えたが、とくに、認知科学者やヒューマノイド・ロボットの実現を目指す工学者の注目を集めている。分野を超えて彼らとヒトに独自の模倣について議論することにより、ヒトの知性にかんする知見を深めることが期待されたため、彼らが参加する国際シンポジウムでの講演をおこなった(ルンド大学)。

また、国外でチンパンジーの知性に携わる研究者らと、最新の知見と今後の研究の方向性について情報交換することで、共同研究の計画を具体化し、実現する必要があった(アーネム動物園・マックスプランク研究所)。

アーネム動物園で飼育されているチンパンジーの社会行動を直接観察し、ビデオカメラによる記録を1週間にわたって終日データを収集した。また、ディレクターであるvan Hooff博士とミーティングをおこない、現在のチンパンジーの知性に関する研究の動向と今後の共同研究の可能性について議論した。

マックスプランク進化人類学研究所Michael Tomasello, Joseph Call博士らと、ヒトとチンパンジーの模倣の発達にかんする比較研究の成果について情報交換し、講演をおこなった。また、本研究所の大型類人猿を対象とした行動実験施設を見学し、今後の共同研究の可能性について検討した。

ルンド大学言語学部Jordan Zlatev博士を中心とするロボット工学研究チームが主催した国際シンポジウムにおいて、ヒトとチンパンジーの模倣の発達にかんする比較研究についての講演をおこなった。また、ルンド大学が今後着手する「ヒトとチンパンジーの模倣の発達(European Great Ape Project)」にかんする研究プロジェクトについて議論した。

 


研究者用観察地点から屋外放飼場をのぞむ

 


アーネムのチンパンジーたち

 


チンパンジーの行動実験場面

 


ルンド大学のシンボル ルンド大聖堂

 

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