事業報告

HOPE報告24号、2005年3月26日

事業番号24(共同研究)

コンゴ民主共和国における野生ボノボの社会・生態学的調査

報告者:田代 靖子

期間:2005年1月8日〜3月8日 (60日間)

コンゴ民主共和国ワンバ村におけるボノボの研究は1970年代からおこなわれていたが、1990年代後半に始まった内戦によって中断されていた。2003年から調査が再開され、調査対象群が生息していることは確認されたが、個体間関係や遊動域の詳細などはまだわかっていない。野生ボノボを長時間直接観察できる調査地はワンバ村だけであり、同属の類人猿であるチンパンジーに比べて遅れている野生ボノボの研究を進めるためには、個体の履歴や調査地の環境に関する資料が集められているワンバ村での野外調査を進めることが重要であると考えられるため、本調査地において調査をおこなった。

キンシャサにおいて、CREF(Centre de Recherche en Ecologie et Foresterie)所長のMwanza Ndunda氏と、ワンバ村におけるボノボの共同研究についての研究連絡をおこなった。 今後も野生ボノボの共同研究を続けることを確認し、これまでに収集したデータの取りまとめについて議論した。

2005年1月19日から2月28日までワンバ村に滞在し、野生ボノボの社会・生態に関するデータ収集をおこなった。現地アシスタントとともに主な調査対象群であるE1集団を追跡し、遊動域、利用環境、利用食物種などの生態学的データを収集した。また、採食・休息時の社会交渉を記録した。

 E1集団では、昨年の調査再開時には観察されなかったメス2個体とそのコドモを新たに確認した。ボノボは離合集散する群れ構造を持つため、前回の調査では確認できなかったと考えられる。内戦前にコドモだったオス数頭は、オトナになって顔つきが変わったため、どの個体であるかがわからなくなっている。そこで、以前分析されたメスのミトコンドリアDNA配列を利用して個体を確定するために、E1集団の個体すべてについてDNA試料を採集した。それとともに、個体間の親和的交渉を記録し、社会交渉をもとにした親子関係の推定をおこなった。

 別の調査対象集団・E2群については、1996年当時識別していた個体を3頭確認し、E2集団が内戦の間に遊動域を大きく変化させながらも生息していることを確認した。P集団については足跡を確認したが、他の集団の生息については情報を得られなかった。


調査路

 


Diarium zenkeriの実を食う

 


二次林でグルーミングするメス