事業報告

HOPE報告2004年9月17日

事業番号17(共同研究)

調査内容:野生ボノボの野外調査と比較研究方法の協議

報告者:五百部 裕(イホベ ヒロシ) 椙山女学園大学・人間関係学部・助教授

期間:2004年 7月31日〜2004年 9月11日( 40日間)

大型類人猿の1種であるボノボ(Pan paniscus)は、コンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)にしか分布していない。しかし、ボノボの生態や社会は、コンゴの政治的混乱や長期研究を行ってきた調査地が少ないといった理由から、同属のチンパンジー(Pan troglodytes)と比べ未解明な部分が多い。そこで、野生ボノボの現地調査を行い、チンパンジーやゴリラなどと比較し得る資料を収集するため、コンゴ民主共和国でフィールド調査等をおこなった。概要は以下のとおり。

1)ワンバ、及びその周辺地域での現地調査

 コンゴ民主共和国ワンバ村とその周辺地域で、野生ボノボ(Pan paniscus)の社会・生態に関するデータを収集した。ワンバでのボノボの野外調査は、1990年代後半から2002年までのコンゴ(ザイール)の内戦期に中断を余儀なくされた。 
そして2004年3・4月に行われたワンバでの調査の結果、この調査中断期にボノボの個体数が大きく減少した可能性が指摘された。そこで今回の調査では、ワンバ、及びその周辺地域のボノボの個体数を把握することを主目的とした。

 ワンバ地域には、調査中断前に少なくとも6集団の生息が確認されており、このうち三つの集団(E1・E2・P)が人づけされていた。今回の調査では、E1集団に関しては個体識別に基づいたほぼ正確な個体数が把握できた。またE2とP集団に関しては、直接観察や声・食痕・ベッドなどの間接的証拠から、その生息はほぼ間違いないと推測された。しかし残りの3集団に関しては、間接的なものも含め、生息しているという明確な証拠は得られなかった。

 また今回は、さらに広い範囲でのボノボの生息実態の調査を行った。ワンバを基点とし、ジョル、リンゴモ、モンポノ、ベフォリといった周辺の都市や集落において、ボノボや他の哺乳類の生息実態や現地住民の森林の利用形態に関する聞き込み調査を行った。

2)キンシャサでの研究連絡とボノボの孤児施設の見学

 キンシャサでは、CREF(Centre de Recherche en Ecologie et Foresterie)所長のMwanza Ndunda氏とワンバにおける共同研究について研究連絡を行った。
 またボノボの孤児のリハビリに取り組んでいるLola ya bonoboを訪れ、所長のClaudine Andre氏と将来の共同研究の可能性について話し合った。



ワンバでの調査のひとこま

 


広域調査でのひとこま

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