事業報告

HOPE報告2004年11月14日

事業番号16(若手交流)

氏名: 半谷吾郎

所属・職: 京都大学霊長類研究所・日本学術振興会特別研究員

タイトル: バーバリーマカクコロニーの見学及びニホンザルとの比較研究の検討

期間: 2004年10月4日から10月27日

訪問先: ドイツ・ザーレム、フランス・レンヌ、スイス・チューリヒ、オランダ・アペルドールン、連合王国・ジブラルタル

 ニホンザルは温帯に生息する数少ない霊長類の一種である。熱帯の動物だった霊長類がどのように温帯にまで分布を広げていったのかを明らかにする上で、ニホンザルの生態学的研究は重要である。現在、東アジアの温帯域ではマカク属の霊長類が広く分布しているが、ヨーロッパでは中期更新世までに絶滅し、北アフリカにバーバリマカクが遺存的に分布しているに過ぎない。ユーラシア大陸の東側と西側のマカク属は、少なくとも数百万年のあいだ、独自に進化してきた。ユーラシア大陸西側のマカクの中で唯一生き残ったバーバリマカクを、東側の種の中でもっともよく研究されているニホンザルと比較することは、温帯の霊長類の適応の一般的傾向を明らかにする上で、非常に重要である。

野生バーバリマカクの研究者の多くはヨーロッパ人であり、ジブラルタルには野生状態でバーバリマカクが生息している。また、ドイツとフランスにはバーバリマカクの大規模な放飼場がある。これらの場所を訪問することで、ニホンザルとの比較共同研究の可能性を検討することを目的とした。

フランス・レンヌ大学を訪問し、派遣研究者のこれまでの研究成果について大学院生・学部学生に講義するとともに、バーバリマカク研究者のネリー・メナード博士とニホンザルとの比較共同研究についての打ち合わせを行った。食性と生息環境に関する比較研究を行うことで合意した。

ジブラルタルを訪問し、ここに生息する野生バーバリマカクを観察し、その研究状況についてジブラルタル鳥類学・自然史研究所の研究員から説明を受けた。年間100万人の観光客がサルを見るためにここを訪れるが、観光客の行動を規制する方法がほとんどないため、サルと観光客の間で管理上さまざまな問題が生じている。

ドイツ・ザーレムサル山公園(Affenberg Salem)およびオランダ・アペンヘウル霊長類動物園を訪問し、野外放飼場で飼育されているバーバリマカクを観察した。

チューリヒ大学人類学部のカレル・ファン・シャイク教授を訪問し、彼の研究室で派遣研究者のこれまでの研究成果についてセミナー発表を行った。


ドイツ Affenberg Salem の バーバリーマカク


ドイツ Affenberg Salem、旅行者向けの散策コース

 


背景にアフリカの山々を望むジブラルタルのバーバリーマカク


ジブラルタル、バーバリーマカクを見る旅行者たち

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