事業報告
HOPE報告15号、2005年5月14日
事業番号15(共同研究)
ウガンダ・カリンズ森林に生息する野生チンパンジーの行動調査
報告者:下岡 ゆき子 京都大学・霊長類研究所・講師(研究機関研究員)
期間:2005年1月8日 〜 2月8日
訪問先: ウガンダ共和国 ヴシェニ県 カリンズ森林
カリンズ森林は最近設立された調査地ながら、チンパンジーの観察が十分にでき、調査のための施設、人員がよく整備されている。また、日本からのアクセスが非常によいため、短期間での調査に適していると考え、本調査地での研究を行った。
2005年1月11日から2月5日まで、カリンズ森林に滞在し、野生チンパンジーM集団の行動観察を行った。明治学院大学の古市剛史教授および現地トラッカー3名と共に、早朝から夕方までチンパンジーのパーティを追跡した。
パーティに発情メスがいる場合は別のパーティを探し、非発情メスあるいはオスからなるパーティのみを観察対象とした。パーティのうち1頭でも採食樹に上るのを確認したら行動の記録を開始し、採食樹に入った時間、全員が採食樹を出た時間、採食樹の種名と採食部位を記録した他、採食樹の樹冠の直径、採食樹の樹冠2m四方内における、熟果と未熟果の平均個数のそれぞれを目測で記録した。さらに、5分ごとに採食樹内の個体数と個体名、活動の内容を記録し、1分ごとに音声をパントフート、フードグラント、その他に分類して記録した。また、GPSを用いてパーティの位置を自動的に記録し、音声をICレコーダーを用いて記録した。
このようにして約100本の採食樹において、各採食樹の果実量、各採食樹でのチンパンジーの滞在時間、頭数、各音声の発声回数に関する資料を収集した。得られたデータを元に、パントフートおよびフードグラントの発声頻度が採食樹における果実量や採食種への嗜好性とどのように関連しているのかを明らかにした。
パントフートの発声は果実量や果実への嗜好性を反映していなかったが、フードグラントはより果実量の多い採食樹で高頻度に発声され、かつ、より嗜好性の高い果実種であるほど高頻度に発声されることが明らかになった。
つるの葉を採食するチンパンジーのオトナオス
樹上で対角グルーミングをするオス2頭
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