事業報告
HOPE報告14号、2005年5月11日
事業番号14(共同研究)
チンパンジーの狩猟行動とチンパンジーの捕食に対するCercopithecus属2種の混群機能調査
報告者:深谷もえ
京都大学霊長類研究所 博士課程3年
期間:2004年7月31日 - 2004年12月9日
訪問先: ウガンダ共和国 ヴシェニ県 カリンズ森林
複数の霊長類が同所的に生息するアフリカや南米では、複数種が1種のように共に遊動し採食する混群という現象がみられる。アフリカではアカオザルとブルーモンキーがこのような混群を形成することが知られている。Cords(1987)によると、ケニアのカカメガ森林においてアカオザルとブルーモンキーが混群を形成するのは、主に猛禽類の捕食から逃れるためだといわれている。一方、ウガンダのカリンズ森林では、猛禽類の他にチンパンジーがアカオザルとブルーモンキーを捕食する。そこで、カリンズ森林においてアカオザルとブルーモンキーがチンパンジーからの捕食を避けるために混群を形成しているのかを検討するために、2種がチンパンジーの接近に対してどのように行動するかを調査した。
カリンズ森林はウガンダ共和国の南西部に位置し、アカオザル、ブルーモンキー、ロエストモンキー、アヌビスヒヒ、クロシロコロブス、チンパンジーの6種の霊長類が生息している。アカオザルとブルーモンキーはともに単雄複雌の群れを形成し、高さ10〜20mを利用する樹上性の霊長類である。カリンズ森林では2種を観察者に慣れさせるために、2003年8月から1年間現地スタッフが中心となりアカオザルR1群とブルーモンキーB1群を追跡した。そのため2004年8月までには個体の真下から2種の群れを観察すること、それぞれの種のオトナメス3個体の識別が可能となった。アカオザルとブルーモンキーの群れを終日追跡し、チンパンジーが接近した際の2種の行動を記録した。また2種が警戒行動をした際の状況を記録した。調査開始時それぞれの群れの個体数はR1群23個体、B1群24個体であった。またそれぞれの行動域面積はR1群約26ha、B1群約25haであり、ブルーモンキーの行動域はアカオザルの行動域内に収まっていた。
今回の観察中にR1群とB1群は頻繁に混群を形成することが観察され、R1群とB1群の個体がチンパンジーに捕食されることは観察されなかった。オトナオスのチンパンジーがアカオザルとブルーモンキーの混群に接近した際、2種のオトナメスが頻繁に警戒音を発声することが観察された。しかし、チンパンジーのオトナメス集団やコドモの接近に対しては、2種ともに大きな反応を示さなかった。チンパンジーのオトナオスはアカオザルやブルーモンキーにとって脅威であると考えられたが、チンパンジーの年齢や雌雄によって2種への捕食圧が異なる可能性が考えられた。
アカオザル Red-tailed monkey (Cercopithecus asucanius)
ブルーモンキー Blue monkey (C. mitis)
同所的に生息しているロエストモンキー L'hoest's monkey (C.
lhoesti)
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