事業報告
HOPE報告12号、2005年5月16日
事業番号12(共同研究)
The 3rd HOPE International Seminar
Different types of genetic investigations to explain the behaviour of
various primates.
Johannes R. de Ruiter ヨハネス R ドロイター Department
of Anthropology, University of Durham
期間:2004年6月30日 〜 7月30日
訪問先: 霊長類研究所・岐阜大学
de Ruiter博士は、インドネシアのカニクイザル、オランウータンにおいて、遺伝子にもとづく血縁解析を行い、行動の遺伝的背景を解明してきた。また近年は、飼育マーモセット群での個性の評価法を開発している。HOPEの国際レクチャー(霊長類研究所で開催)においてそれらの成果を紹介する。さらに、岐阜大学の村山らが行っている、行動に関与する遺伝子を解析して個性の遺伝的背景の解明を目指す共同研究の打合せと予備実験を行う。
7月8日17-18時に、霊長類研究所で開催された。内容は、de
Ruiter博士が、これまでに行ってきた霊長類の行動の遺伝的背景に関する研究と、現在進行中のマーモセットの研究の紹介であった。
野生カニクイザルにおいて、DNAマルチローカスフィンガープリンティング法により父子判定に成功し、繁殖成功度の情報をもとに、マカク類の繁殖戦略を再考した。さらに、PCRを用いたマイクロサテライト多型の解析により、非侵襲的に得た野生オランウータンの糞の試料を分析して、父子判定とオス同士の血縁判定を行い、オスの顔の周囲の突起の形成が社会関係の影響を受けること、低順位で突起のないオスも繁殖していることがわかった(Utami
et al., 2002)。
飼育マーモセット68個体を用いて、飼育ケージで個別に提示した新奇物への反応を解析し、顕著な個体差を見いだした。さらに、オペラント学習反応の自動記録装置を開発し、30個体を解析した結果、特定の行動特性、新奇物への反応、学習能力の間に関連性があることがわかった。
現在、特定の家系に遺伝する行動特性を探索しており、今後、行動特性の個体差に関連する遺伝子を見いだしたいとのことであった。参加者は霊長類研究所員や海外からの研究者など40名ほどで、発表後、活発な討論が行われた。
岐阜大学で、ヒトで性格との関連が報告ざれているドーパミンD4受容体、セロトニントランスポーター、アンドロゲン受容体などの遺伝子について、行動評価を行っている飼育マーモセット集団における多型の有無を解析し、ドーパミンD4受容体においてPCR産物の長さの多型を見いだした。また野生カニクイザル、野生オランウータン、動物園のボノボでも多型の有無を解析した結果、オランウータンではDNAの量が少なくPCR増幅困難であったが、カニクイザルとボノボで多型を見いだした。現在、シーケンスによる確認を行っている。今後、個体の遺伝子型と行動特性との関連を解析する。
岐阜大学
岐阜大学
霊長類研究所での講演の様子
活発な討論が行われた
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