事業報告

HOPE報告9号、2004年5月27日

事業番号5(若手交流)

 "Diseases- the third major threat for wild Great Ape?"への参加

報告者:井上 英治(京都大学理学研究科・大学院生)

期間:2004年5月6日 〜 5月8日

 第1回の大型類人猿の病気に関する会議(Diseases- the third major threat for great Apes?)がライプチヒで行なわれた。病気による人付けされたチンパンジー個体群の減少、エボラ出血熱によるゴリラ、チンパンジーの激減など、大型類人猿にとって病気は大きな脅威の1つとなっている。そこで、本会議では、さまざまな研究分野の人が病気に関し口頭およびポスターで発表を行ない、GAHMU(Great Apes Health Monitoring Unit)というネットワーク設立に関する討論が行なわれた。

 口頭およびポスター発表では、大型類人猿だけでなく野生動物への人、家畜からの病気への感染に関する危険性、現状とその対策についての発表や、類人猿の健康状態を調べるためや死因を決定するための実験室内でのウイルスの免疫学的、分子学的な調査についての発表などが行なわれた。また、現在までに病気が感染した地域の研究から、調査地の環境の撹乱だけではなく人や家畜の病気の対策を十分に行なう必要性が示された。各地域においてさまざまな対策がなされている現状についての話がなされたが、現状では予算や各地の背景を考慮しながら対策を行なっていくしかないように思われた。また、健康状態のモニターについても、フン、尿などの非侵襲的なサンプルから得られる情報については、今後各地域で長期的に行なうことが必要であると思われた。

 GAHMUの設立に関する会議では、今後必要とされる大きな枠組みに関する話し合いがなされた。大きなプロジェクトのため、具体的な話についてはあまりなされなかった。しかし、このようなネットワークが必要であり、大型類人猿の病気に対して協力して解決していくという考えで皆賛同していた。GAHMUは、これからのプロジェクトであり、今後しっかりした体制がつくられたら、類人猿の保全に大きく役立つであろう。

 


GAHMU会議前の様子(バイオシティ、セミナールーム)

 


口頭発表の会場(マックスプランク研究所、レクチャーホール)

(文責:井上 英治)


HOPE Project<hope@pri.kyoto-u.ac.jp>