事業報告

HOPE報告1号、2004年6月28日

事業番号1(若手交流)

HGM2004国際ヒトゲノム会議2日目(2004年4月5日)に行われたワークショップ「Primate Genomics」において、
「The DNA Sequence of Chimpanzee Chromosome 22 and Comparative Analysis with Human Chromosome 21」について講演

報告者:渡邉 日出海

期間:2004年4月15日 〜21日

 HGM2004国際ヒトゲノム会議2日目(2004年4月5日)に行われたワークショップ「Primate Genomics」において、「The DNA Sequence of Chimpanzee Chromosome 22 and Comparative Analysis with Human Chromosome 21」について講演を行った。

 本研究はSvante Pääboとの共同研究による成果である。同会議に招待されていたPääboとこの研究の拡張について議論するとともに、コモンチンパンジーとボノボの間の種分化に対するコンゴ川の形成の影響について話し合った。

 コモンチンパンジーとボノボの生息域は、コンゴ川で明確に分離しており、コンゴ川の形成による地理的隔離が両種間種分化の主たる原因である、というのが本研究者の仮説である。この仮説が正しければ、地質学的証拠などによって得られるであろうコンゴ川の形成時期が種分化の時期に一致するはずである。化石資料などに基づくヒト‐チンパンジー間の種分化時期の推定値からの間接的推定値として200万年前にコモンチンパンジー‐ボノボ間の種分化が起きたとされているが、逆に、この種分化時期を地質学的証拠に基づいて正確に推定することができれば、ヒト‐チンパンジー間の種分化時期を正確に推定でき、ヒトや類人猿、霊長類の進化についてのより正確な情報が得られることになる。

 議論の中で、この仮説の問題点や検証方法を検討した。また、Pääbo らが最近発表した論文(Mol Biol Evol. 21:799-808 (2004))では、コモンチンパンジーにおける遺伝的多様性が中央アフリカと西アフリカで大きく異なることなどが報告されている。

 興味深いことにその境目にニジェール川という大河があることから、このニジェール川の形成がコモンチンパンジー内の遺伝的多様性の分化と関連する可能性についてもPääboに指摘したところ、結論を出すためには詳細な解析を待たなくてはならないが基本的には同意するとのことだった。

 

(文責:渡邉 日出海)


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