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第一回ウマとサルの民俗アンケート調査の結果

ウマとサルの民俗アンケート調査(2007年2月から4月)を実施いたしました。
その結果を公開いたします。

調査の対象は、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、長野県、岐阜県、愛知県、三重県、和歌山県、奈良県、岡山県、広島県、島根県、宮崎県、熊本県、鹿児島県の18県です。他の都道府県については今後調査する予定ですが、今回の結果からある程度傾向がつかめたように思います。

質問項目ごとに、回答いただいた結果を行政区単位で地図化しました。いったんは旧市町村を単位にまとめようとしましたが結果の統一性を欠くおそれが生じたため、新市町村を単位に結果をまとめました。

<地図の見方>
質問1の1〜6の地図にかんして、ピンク色に塗ってある市町村は、"ある"あるいは"あった"と回答された市町村です。(なお質問1-6は、"該当なし"という回答の市町村がピンク色に塗ってあります。)

質問2の1〜7の地図にかんして、青色が塗ってある市町村は、"ある"あるいは"あった"と回答された市町村です。(なお質問1-7は、"該当なし"という回答の市町村が青色に塗ってあります。)

<解説(現時点でいえること)>

[質問1]ウマやサルについての資料や行事についての有無の質問。

1. ウマやサルに関わった石塔、石碑などがある(あった)。
   東北地方から九州までほぼ全国的に見られます。
   質問2の1との関わりあいでウマに関するものがおおいようです。

2. ウマやサルに関わった神社・仏寺がある(あった)。
   これもほぼ全国的に見られるようです。

3. 馬小屋、牛小屋にサルの頭や手がある(あった)。
   東北地方、中部山村地、中国地方に残っています。

4. ウマやサルに関わった神事、祭りがある(あった)。
   ほぼ全国に散見されます。おもにウマに関するものが多いようです。

5. ウマやサルに関わった「講」や法会がある(あった)。
   ほぼ全国に散見されます。これもウマに関するものが多いようです。

6.いずれにも該当しない。

 

 

[質問2]質問の 1で○印の項目に関して、そうした信仰、風習、文化の有無の質問。

1. そうぜんしん・ごそうぜんさまがある(あった)
   おもに東北地方に残る特徴的な呼び方のようです。

2. ばれきしん(馬櫪神)がある(あった)
   これも東北地方に局在しています。一部中国地方に見られます。

3. ばとうかんのん(馬頭観音、馬頭観世音)がある(あった)
   ほぼ全国的に見られる信仰のようです。

4. こうしんさま(庚申様、庚申講)がある(あった)
   これもほぼ全国的に見らます。

5. うまやざる(厩猿)がある(あった)
   東北地方、中国地方に比較的多く見られます。

6. ひえ・ひよし・さんのう・さんのうごんげん(日吉信仰・山王様)
   全国に散見されます。

7.いずれにも該当しない。

馬頭観音信仰や庚申信仰に関しての"ある""あった"回答は全国的に見られる習俗で、今なお信仰されているところもあります。とくに馬頭観音信仰はウマばかりではなくウシも対象となっており、各地で牛馬が重要な働き手であったことがうかがわれます。
 いっぽうウマの守り神である"ごそうぜんさま、蒼膳神"や"馬櫪神"信仰は東北地方に特徴的に見られ、かつての馬産地に重なっているようです。

現時点での大まかな特徴は以上のようなものです。
今後、それぞれの習俗との関係も分析する予定です。